うさぶた伯爵SS
月光のうさぶた伯爵(1)
うさぶた伯爵はその日友人からもらったグラスを眺めていた。
細かな装飾はないが厚いガラスで形づくられた堂々としたグラスだった。
伯爵はまだ何も入れていないグラスを右手に持ち窓から差し込む月光に透かして見る。よく見るとグラスの底の方に小さな気泡がいくつかあるのが分かった。ガラスのそこからブクブクと水蒸気が沸き上がっているようで面白い。
伯爵は上品にグラスを机に置いた。
ひかりちゃんは今何をしているだろうか。
伯爵は先日光の王国へ行き、公園の草刈りを手伝った。その時にひかりちゃんからこのグラスをもらったのだ。ひかりちゃんは光の王国の女王だから、ちゃんと草刈りのお礼を用意していた。グラスは光の王国北部で作っている名産品らしい。光の王国北部は冬の間とても寒くなるので人々は街道を封鎖し、集落内でガラス細工を作るらしい。気泡は特別な魔法で入れているんだそうだ。伯爵は魔法が使えないから、どうやって作るのか見当もつかないが、踊る泡をみているとグラス作りはきっと楽しいんだろうなと思った。
伯爵がそろそろ寝ようと思いグラスを持ち上げようと傾けた時だった。
伯爵は目を見張った。
(つづく)